70代女性 合わなくなった上顎の入れ歯とブリッジを除去して上下顎に新しい入れ歯を作製した症例
ご相談内容
「上の歯に装着している入れ歯が合わなくなってきた。また、上前歯が揺れているのも気になる」とご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果
拝見したところ、上顎には人工歯が連結している被せ物「ブリッジ」と部分入れ歯が装着されていましたが、ブリッジの支えとなっている歯(支台歯)が大きく揺れ、温存が難しい状態でした。
また、揺れている支台歯に入れ歯を固定するバネが装着されていたことにより、入れ歯の安定性も損なわれています。
詳しく検査をした結果、そのほかにも温存が難しい歯がいくつか見られます。
加えて、下顎は前歯部だけが残存しており、奥歯の多くはすでに折れて歯根のみが残っていました。
このまま放置すると、残っている下前歯に過度な負荷がかかり、歯が割れたり歯茎が炎症を起こしたりするリスクがあります。
さらに、噛み合わせのバランスが崩れ、口腔内全体に悪影響が出るおそれもあります。
以上のことから、温存が難しい歯を抜いたうえで上顎の入れ歯を作り直し、下顎にも入れ歯を新しく作製する必要があると診断しました。
行ったご提案・治療内容
診断結果をもとに、残っている歯を活用しながら入れ歯を作製する方法として、以下の3つを提案しました。
①マグネットアタッチメント義歯
残っている歯根に磁石の受け側となる部品(キーパー)を取り付け、入れ歯側の磁石とくっつけて安定させる入れ歯です。
メリット:金属のバネを使用しないため、入れ歯が目立ちにくい
デメリット:歯の状態によってキーパーを取り付けることができない場合、この入れ歯は使用できない
②Oリングアタッチメント義歯
残っている歯に突起状の装置を取り付け、入れ歯側のOリングと組み合わせて固定する入れ歯です。
メリット:入れ歯が安定しやすい
デメリット:Oリングは摩耗するため、定期的な交換が必要になる場合がある
③クラスプ(バネ)義歯
残っている歯に金属のバネをかけ、その歯を支えとして入れ歯を安定させる一般的な入れ歯です。
メリット:構造がシンプルなので、修理や調整を行いやすい
デメリット:金属のバネが外から見える場合があり、審美性に欠ける
それぞれのメリットとデメリットを説明したところ、患者様は①のマグネットアタッチメント義歯を選択されました。
ただ今回の治療は、抜歯によって口腔内の状態が大きく変化することが予想されます。
そのため、最初から最終的な入れ歯を製作するのではなく、既存の入れ歯を調整し治療用の入れ歯として使用しながらお口の状態を整え、段階的に入れ歯を作製することをお伝えし、同意いただきました。
まず、現在使用している上顎の入れ歯の修理と調整を行います。
抜歯後も既存の入れ歯が使用できるよう、抜歯予定の部分には即時に硬化する樹脂の材料を用いて形を整えました。
次に、右上奥歯(第1小臼歯)、右下奥歯(第3大臼歯)、左下前歯(犬歯)、左下奥歯(第3大臼歯)の計4本を抜きます。併せて、抜歯により使用が難しくなった上顎のブリッジも除去しました。
抜歯後は傷口の状態を確認しながら、入れ歯の内側を調整しています。
続いて、上顎に装着するためのミルドデンチャーを製作しました。
ミルドデンチャーとは、コンピューターで設計し、プラスチックのブロックを削り出して製作する入れ歯です。
入れ歯が完成したら既存の入れ歯を除去し、上顎に残っている歯のうち3本の頭部分をカットして、キーパーをそれぞれ3ヶ所に取り付けました。
ただ、上顎の入れ歯を装着したところ十分安定していたため、この段階では磁石を使用せず、入れ歯本体の安定性のみで装着することにしました。
上顎の治療と並行して、下顎にはチタン床義歯を製作し、装着しています。
チタン床義歯は、入れ歯の土台部分にチタンを使用しており、強度を保ちつつも薄く設計しやすいのが特徴です。
その後、上顎の入れ歯を使用いただいていたところ、抜歯部分の治癒に伴いお口の状態が変化したことで、上顎の入れ歯の内側に隙間が生じてきました。
また、患者様から「ミルドデンチャーの上顎を覆っている部分の厚みが気になる」との意見もあり、上顎もチタン床義歯へ作り直す方法を提案し、同意いただきました。
上顎の入れ歯を作り直す際は、BPS(バイオファンクショナル・プロステティック・システム)という、患者様の口腔状態や噛み合わせを考慮して入れ歯を製作するシステムを用います。
まずは精密な型をとり、噛み合わせの状態を確認するゴシックアーチ検査を行ったあと、人工歯を並べて入れ歯の作製を進めました。
最後に、完成した上下の入れ歯を装着し、見た目や噛み合わせに問題がないことを確認して、治療を終了しています。
今回の症例では、初診から治療方針の決定、既存の入れ歯の修理と調整、抜歯、上顎のミルドデンチャーと下顎のチタン床義歯の作製と装着、そして上顎のミルドデンチャーをチタン床義歯に作り直すまで、約1年かけて段階的に治療を進めました。
この治療のリスクについて
・着脱式のため、食後の清掃が必要です
・最初のうちは異物感があり、慣れるまで時間がかかる場合があります
・慣れるまでは、入れ歯の裏側の粘膜に傷ができる場合があります
・持病をお持ちの方や、服用中のお薬の種類によっては、外科処置ができない場合があります
・外科処置後に腫れ、出血が生じる場合があります
・外科処置後に痛みが長引く場合があります。必要に応じ痛み止めを併用します
年齢・性別 70代女性
診療種別 自由診療
治療期間の目安 約1年
治療費総額の目安 1,430,000円
(当時/下義歯、上顎ミルドデンチャー、マグネット3ヶ所、上チタン床義歯)
※掲載された情報は治療の効果を保証するものではありません。